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  • 本田有明

雑誌連載記事から

最終更新: 2020年9月2日

日本経営協会『オムニ・マネジメント』 より

♦パワハラ問題のむずかしさ 


管理職を対象とした講演や研修の依頼で、パワハラ問題を扱ってほしいとの要望が多くなった。かつてはセクハラが中心だったが、最近のキーワードは(セクハラを含め)パワハラである。その定義や分類の広さがこの問題をむずかしくしているようだ。


ためしに厚生労働省による定義を見てみよう。次のようになっている。


「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」


これは2012年1月に厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ」が発表したものだ。さらに2020年6月に施行された労働施策総合推進法で、ほぼこのとおりに条文として明記されたことは、すでにご存じの方も多いことと思う。


一般にパワハラというと、「上司が部下に対して行ういじめ」とアバウトに理解されやすいが、それだけではない。引用した定義の中で注意したいのは、(1)「人間関係などの職場内の優位性を背景に」というところと、(2)「業務の適正な範囲を超えて~職場環境を悪化させる行為」というところだ。


たとえば、異動してきた社員に対して同僚たちが集団で村八分的な対応をとったなら(1)に該当する。仕事ができる有能な若手にどっさり仕事を与え、そうでない者には雑用的な業務ばかりさせたとしたら(2)に該当するだろう。



もちろん程度や頻度にもよるので、パワハラに該当するか否かの線引きはむずかしいところだが、この問題に関する現代の解釈はかなり間口が広くなっていることを知っておく必要がある。「パワハラ」をネットで検索すると、訴訟の事例が数多く並んでいることに驚かされる。


♦信頼関係を築くキーワード 


パワハラの分類は次のようになっている。


 ①身体的な攻撃(暴行・傷害)

 ②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)

 ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

 ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)

 ⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる

   ことや仕事を与えないこと)

 ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)


この中で比較的わかりやすいのは①と③だろう。身体的な攻撃や人間関係からの切り離しは相手が受ける苦痛について加害者側にも一定の予想ができるからだ。


②は主に言葉による攻撃だが、これは言う側と言われる側との認識のズレが大きく、叱責なのか暴言なのかの区別がつきにくい。それまでの人間関係によっても解釈が異なる。


「とっとと辞めろ」「給料泥棒」「死んでしまえ」などは、どうやわらかく言っても相手の人格を傷つける言葉だから、クロだとわかる。


では、「なにやってるんだ」「なんでできないんだ」はどうだろうか。その場の状況や双方の関係性、また頻度によってクロにもなることもあれば、ならないこともある。言う側にとっては、なんのためにそう言うのかという目的性が問われ、言われる側にとっては、それによってどれほどの精神的苦痛を受けたかのレベルが問題になる。


仮にうっかり口をすべらせることがあったとしても、その程度では損なわれない強固な信頼関係を築いておくこと。平凡な指摘だが、結局そこが最も重要なポイントになるのは、パワハラ問題に限ったことではない。


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日本能率協会でマネジメントを学ぶ 大学を卒業後、私は経営教育・コンサルティングの推進団体である日本能率協会に就職しました。大学での専攻は哲学で、「ひとりくらい変り種がいてもよいだろう」が採用の理由だったそうです。 日々の学習テーマが哲学から経営学に変わったため、当初はチンプンカンプンで、モラール(やる気)とモラル(道徳)を混同するなど、冷や汗をかいたものです。しかし日本能率協会というところは、働き