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本田有明

爆笑本『百万回死んだねこ』




図書館司書による覚え違いタイトル集


 3年前に刊行され話題となった『百万回死んだねこ』が今年の10月、めでたく文庫化されました。副題は「覚え違いタイトル集」、編著者は福井県立図書館の司書の方々。タイトルはロングセラー書『百万回生きたねこ』の間違いですが、じつはかつて私も同じ記憶違いをしており、児童書の編集担当者に笑われたことがあります。


 図書館の司書の皆さんが、実際に来館者から聞いたりカードで目にした覚え違いタイトルを並べたもの。というと、「それがなにか?」と言われそうですが、それが爆笑をさそい、腹筋が痙攣するほどにおもしろい間違いばかりなのです。食事中の家内に私が一節を読んで聞かせたところ、ほんとうに噴飯しました。


 間違いの例をあげてみます。


 ①『僕ちゃん』、②『ゴリラ爺さん』、③『ひやけのひと』、④『ヘンタイ』、⑤『海の男』、⑥『人生が片づくときめきの魔法』、⑦『そのへんの石』、⑧『ストラディバリウスはこう言った』、⑨『ぶるる』みたいな旅行の本、⑩男の子の名前で『なんとかのカバン』。――いかがでしょうか。


いくつわかりましたか?


 『僕ちゃん』『ヘンタイ』『そのへんの石』には、くしゃみが出そうです。『ストラディバリウスはこう言った』などは、同じ間違いでも教養を感じさせ、「ざぶとん1枚」と言いたくなります。


 この本の趣旨は、閲覧者の言い間違いやカードへの書き間違いをあざ笑うことではありません。ネットでの検索ではたどりつけないような記憶違いでも、図書館のレファレンスコーナーなら大丈夫。恥ずかしがらずにどんどん質問してください、という図書館利用者へのエールなのです。たしかに『僕ちゃん』や『ヘンタイ』で正解にたどりつけるのは、ネットではなく図書館司書の経験のなせるわざ。困ったときには図書館に行こうとの思いを、筆者も強くもったしだいです。


 上記10問に対する司書さんたちの答え。


 ①『坊っちゃん』(夏目漱石)、②『ゴリオ爺さん』(バルザック)、③『火宅の人』(檀一雄)、④『変身』(カフカ)、⑤『老人と海』(ヘミングウェイ)、⑥『人生がときめく片づけの魔法』(近藤麻里恵)、⑦『路傍の石』(山本有三)、⑧『ツァラトゥストラはこう言った』(ニーチェ)、⑨JTB発行『るるぶ』、⑩『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(ローリング)。


 間違いの例として本書に取り上げられた小説家が、オビの文でこう記しています。

「私は恩田陸(おんだりく)です。思田睦(しだむつみ)ではありません」


 では、本田有明からもひとつ。

「私は『願いがかなうおかしな日記』の著者ではありません」

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