「視線を15度上げてみよう」
先日、クライアント先の知人と話していたときのこと。相手の雰囲気がどこか、いつもと違います。明るく快活になったような印象でした。
「なにかいいことがありましたか?」と聞くと、「心療内科の医師にアドバイスされました」とのこと。
年に何度か「心のクリニック」に通っているとは聞いていました。謹厳実直な性格が災いして、仕事や人間関係のストレスがたまりやすいタイプなのです。医師から受けたアドバイスというのが「視線を15度上げてください。世界が変わって見えますよ」。
なるほど。うなずけるものがありました。
「プラス思考でいこう」「気持ちにゆとりをもとう」といったアドバイスはよく耳にしますが、それが簡単にできるようなら苦労はしません。心に効くクスリは、具体性のある実行可能な助言なのです。
世界が違って見えたか?
「視線を15度上げるって、ちょっと難しそうですね?」と言うと、「分度器で測って、角度を紙に書いてみました。横から見ると、このくらいあるんですよ」
まじめな彼は、私の前で「視線を15度上げる」様子を実演してくれました。
水平と15度の差は、想った以上に大きいものでした。ドラマなどで主人公が「よし、がんばるぞ」と決心して空に目をやる。そんな場面を連想しました。
彼は医師から、もうひとつ助言を受けていました。人に話しかける前に、「うん」と小さく自分にうなずき、その流れで声を出すこと。以前よりしっかり会話ができるようになるからと。人と接する際に小さなルーティンをつくり、元気な自分を演出する、ということでしょう。
「それで、世界が違って見えるようになりましたか?」と冗談まじりに尋ねてみました。
「そうですね。今は前より本田さんが、いい男に見えます」
これはすごい! ざぶとん1枚進呈です。
「ほかにも変わったことは?」
「視線を上げるようにしたら、気のせいか肩がこらなくなりました」
そんなご利益があるなら、私もさっそく視線を15度上げる練習をしてみよう。素直に思ったしだいです。(日本経営協会発行『OMNI-MANAGEMENT』より)
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