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本田有明

「多様性を尊ぶ」とは――?

 近年、「ダイバーシティ・マネジメント」に関する講演やセミナーの依頼が増えました。 多様な人々を差別することなく尊重し、それを強みにするマネジメント志向しよう、という趣旨であることは、「いまさら」でしょう。


 しかし多くの職場では、年長者ほどこの言葉に、戦々恐々としているようです。外国籍や障がいをもつ人、LGBTという文字ばかりに目がゆき、「該当者がいない場合はどうすればいいのか」という質問を受けることも、よくあります。

 なにか“特別な人”がダイバーシティという言葉に該当する、という誤解が根底にあるのです。じつはそれが、偏見のもとになるわけですね。


「武田節」の一節に「人は石垣、人は城」という有名な文言があります。城の石垣は、大きなものから小さなものまで、さまざまな石がうまく積み重なって堅固な基底部を形成しています。あの石のひとつひとつが、まさにダイバーシティです。

 障がいの有無や性的な指向など、むしろ「どうでもいいやん」と包み込むおおらかさこそ、逆説的ですが、ダイバーシティ・マネジメントの本意ではないか。私はそのように説いています。


 2001年のミレニアムに、トヨタ自動車は5つの「トヨタウェイ」を定めました。グローバルトヨタが共有すべき価値観と行動指針を簡潔に示したものです。その中に、おなじみの「Kaizen(改善)」や「Genchi Genbutsu(現地現物)」とともに、「Respect(尊敬・尊重)」と「Teamwork」が入っています。すべての人をリスペクトして、チームワークにより最大の成果をめざそう、ということです。


 あまりにも当たり前すぎて、耳を素通りしてしまいそうですが、これこそダイバーシティ・マネジメントの基準となる発想です。どういう人であれ、自分の好き嫌いは度外視して、まずリスペクトしよう。

この「自分の好き嫌いは度外視して」というところが肝心です。それを基準にすれば、たとえばタイプが異なる部下や、嫌いな同僚に対して、どう接すればよいか、おのずから答えが見えてくるでしょう。

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